JR横須賀線三浦道踏切の手前にある堂は辻の薬師堂である。地域持ちのお堂で、現在ある薬師堂自体は、この地にあった長善寺の薬師堂であった。明治の横須賀線線路敷設で長善寺は廃寺になり、薬師堂だけが残った。長善寺はもともとは名越御嶽にあり、その前身は二階堂の現在の鎌倉宮のある地にあった禅宗の東光寺であったという。東光寺の詳細についてはわかっていないが、建武元年(1334)の護良親王の幽閉された際、その牢屋があったとされているところである。東光寺は、源頼朝によって永福寺そばに建立された薬師堂が前身とする説がある。その薬師堂こそがこの辻の薬師なのかもしれない。
辻の薬師
薬師堂には薬師三尊像及び鎌倉時代作の十二神将像が安置されていた。薬師如来は平安期、十二神将のうち八躯は鎌倉時代の作品で、薬師如来の両脇侍と十二神将のうち四躯は後世の補作である。十二神将は覚園寺(大蔵薬師堂)の十二神将の早い時期の模刻であると考えられ、慶派仏師たちによる優れた作品であると同時に鎌倉地方における薬師信仰を考える上でも貴重である。平成5年(1993)から十四年間にわたって修理事業が行われた。堂内の像は現在は鎌倉国宝館へ移管され、堂内にある像はレプリカである。