名越の四つ角から衣張山の方向へ歩き、小さな路地を入ると突き当りに六方の井がある。「六法の井」「六坊の井」ともいう。池のように広い口をあけており、手前に案内板が立っている。それによると井戸は誰がいつ掘ったかよくわからないが、弘法大師が掘ったとも伝えられている。どんな日照りにも枯れたことがなく、明治時代の日照りでは近在の人が汲みに来たこともあったという。また井戸の側面にあった竜頭というものまで水が減ると必ず雨が降るとか、比企ヶ谷・妙本寺の蛇苦止堂にある蛇形の井(じゃぎょうのい)とつながっており、龍がこの井戸と蛇形の井を往復している、といった言い伝えが残されている。かつては個人の邸宅内にあったようだが、現在は一般の人も見ることができる。
六方の井