十二所の光触寺の境内には他に「塩嘗地蔵(しおなめじぞう)」がある。このお地蔵様にも次のような伝説がある。光触寺の前を通る金沢街道は朝比奈峠を経て東京湾の港六浦と鎌倉を結ぶ重要な道であった。昔、朝比奈峠を越えた塩売りの商人がこのお地蔵様に塩をお供えし、商売繁盛を祈った。そうして帰りに再び朝比奈峠を越える途中、このお地蔵様の前を通ると行きにお供えした塩がなくなっている。そこで「お地蔵さまがお塩を嘗めたのだ」という言い伝えが生まれ、この名がついた。塩は誰かが持って行ってしまったのかもしれないが、往時の金沢街道の賑わいを思わせる話である。また、この塩の話からかこの金沢街道は別名「塩の道」とも呼ばれる。今でも現道の県道は横浜市金沢区と鎌倉市を結ぶ重要な道として観光と生活、産業に欠かせない道である。旧道の朝比奈峠へは十二所神社の近くから道がのびている。
塩嘗地蔵