比企ヶ谷の妙本寺山門前から大町の八雲神社へ向かう脇道を進むと左側に常栄寺がある。山号は恵雲山。日蓮宗でぼたもち寺の名で知られる。もと妙本寺の末寺。開山は日祐。本尊は三宝祖師。本堂と庫裏のみのこぢんまりとした寺である。文永8年(1271)、日蓮が捕えられ、竜の口の刑場に引き立てられる折、この地に住んでいた桟敷尼という老婆が馬上の日蓮にぼたもちを渡したという。その日の夜、竜ノ口で処刑は行われたが、江ノ島の空に光物が出現し、首切り役や警護の武士たちがおびえて、日蓮処刑は中止になったという伝説がある。そのため、老婆の差し出したこのぼたもちは「首つなぎぼたもち」として知られ、その霊地に常栄寺が建った。しかし、寺が建立されたのは慶長11年(1606)のことであった。
常栄寺
常栄寺の名は、日蓮にぼたもちを差し出した尼、妙常日栄の名から来ている。この尼は桟敷尼(さじきに、さじきのあま)とも呼ばれているが、これは昔頼朝がここに桟敷を作って由比ガ浜を遠望した。このことからここに住んだ尼が桟敷の尼を称したのだと寺伝は伝える。ぼたもちの功徳をたたえて、毎年9月12日には御法難会が行われる。