扇ガ谷の寿福寺の北隣にあるのは英勝寺である。浄土宗で山号は東光山。もと京都の知恩院の末寺。本尊阿弥陀三尊。開山は玉峰清因、開基は英勝院。寛永13年(1636)の創建。現在、鎌倉唯一の尼寺で、以前は正月以外は入れなかったが、現在は参拝が可能である。
英勝寺の仏殿
ここは元太田道灌の屋敷跡とされ、道灌の子孫にあたる太田康資(おおたやすすけ)の娘、英勝尼が祖先のすんでいた地に尼寺を建てたのが始まり。太田道灌(1432〜86)は室町時代の武将で扇谷上杉定正に仕えた。築城や兵法に通じ、岩槻城(埼玉県岩槻市)、河越城(埼玉県川越市)
のほか、江戸城を築城したことで有名である。英勝尼は道灌の子孫で出家前は「お勝の局」と呼ばれていた。江戸城に奉公中、徳川家康の側室となり、家康の死後、出家し、先祖ゆかりのこの地を徳川家より与えられて建てた寺が英勝寺である。英勝寺はその後、水戸徳川家の姫から住持を迎えることが慣例となり、水戸徳川家の寺として高い寺格を持った。
境内に再建された山門
現在の寺観は総門、山門、仏殿、祠堂、唐門、鐘楼などでいずれも江戸初期の建築である。他に境内奥に庫裏・書院・宝蔵庫と竹林がある。山門は関東大震災で倒壊したため、地元の篤志家に買い取られ小町の東勝寺橋の奥に移築されていたが、平成13年(2001)に英勝寺に戻されることが決まり、解体の上、英勝寺に運ばれ保管されていた。その後、平成23年(2011)に仏殿の前に建て直された。