鎌倉駅から金沢八景駅行きの京急バスに乗りバス停「浄明寺」で降りると、歩いてすぐのところに浄妙寺がある。臨済宗建長寺派。山号は稲荷山(とうかさん)。鎌倉五山の第五位。本尊は釈迦如来。他に退耕行勇像や淡島明神像がある。なお、周辺の集落の名は浄妙寺によるものだが、地名は当初「常明寺」、後に「浄明寺」と書くようになった。
本堂
寺伝によれば、文治四年(1188)に足利義兼が退耕行勇(たいこうぎょうゆう)を開山として創建したことに始まるという。当初の名前は極楽寺で宗派も真言宗であった。宗派が臨済宗になり、浄妙寺の名に変わったのは鎌倉時代末期になってからと考えられている。元亨元年(1321)の北条貞時十三年忌供養には五十一名の僧侶が浄妙寺から参加している。足利氏とのつながりが深い寺院で、足利貞氏の逆修塔の宝篋印塔が境内墓地にある。室町時代には鎌倉公方の屋敷が隣接していた。現在、境内には山門、本堂、庫裏などがある。境内の北東端に鎌足稲荷なる祠がある。昔、藤原鎌足が常陸の鹿島神宮を参詣する途中、相模国由比において夢枕に老人が現れ「この鎌をこの地に埋めれば天下は安らかに治まる」と言って鎌を授けた。鎌足が翌朝起きると案内の白狐が現れ、鎌足をこの地に導いた。そこで鎌足はその鎌をこの地に埋め、天下の平安を願ったという。この伝説は「鎌倉」の地名の起こりの一つとされている。北西の山には浄明寺の鎮守の熊野神社がある。また境内の近くには大休寺と延福寺という二つの廃寺が隣接していたようである。
山門